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市議団の活動

14年度神戸市予算案分析

2014年02月24日

大規模事業、企業誘致路線を継続
 市民要求も反映 乳幼児医療費助成拡充など

神戸市が発表した2014年度当初予算案は、一般会計7070億5400万円(前年度比30億9000万円・0.4%減)、特別会計6910億9700万円(同23億円・0.3%減)、企業会計3664億100万円(同617億1600万円・20.3%増)、合計1兆7645億5200万円(同563億2600万円・3.3%増)となっています。新年度から公営企業会計の会計制度が見直しされたため、大幅増となっていますが、その影響を除けば、3179億8900万円(同133億400万円、4.4%増)となります。
新年度予算案は久元喜造市長による初の予算案。市長選で争点になった課題や論戦で明らかになった市民要求などがどう反映されるかということと、三宮開発なども含めた大型公共事業・開発路線にたいする姿勢も注目されました。久元市長は、新年度予算案を「神戸の元気創造予算」だとして「『輝ける未来創造都市の実現』に向けた取り組みを加速化」させるとしています。新年度予算案の主な内容を見てみました。

アベノミクス追随の予算案
「都市間競争」口実に大企業支援

「消費税増税」と「都市間競争」に生き残るための「経済対策」と「くらしづくり」-久元市長の施策からでてくるのは、〝大企業を応援して進出させ、その大企業が利益をあげれば、いずれは雇用、賃金、家計にまわってくる〟という、破たんした「トリクルダウン」政策であり、安倍政権がすすめる「アベノミクス」に追従した市政運営です。「市民要求実現への一歩」となる施策もありますが限定的になっているのが現実です。
歳入では、市税収入総額は2722億円(同58億円増)となっています。法人市民税、固定資産税や都市計画税が増加しています。新年度の特徴では、消費税増税に伴う地方消費税交付金が52億円も増えていることです。この増収分は、乳幼児医療費助成、妊婦健康診査、障害者自立支援給付費、後期高齢者医療事業、介護保険事業などに当てるとされています。

住宅バリアフリー化助成制度を創設
保育所 1400人の定員拡大

歳出で、市民要求との関連でみると、神戸市民要求を実現する会などによる粘り強い運動や、市長選であたたかい神戸市政をつくる会の、ぬきな候補が訴えた公約も一部反映された内容になっています。
子どもの医療費助成ですが、中学卒業までの外来の一部負担が「1日上限500円」(1医療機関ごと)に拡充されました。しかし、市民の願いは「中学校卒業までの無料化」です。県内の多くの自治体では実現しています。市長の公約でもあります。「任期中には実現する」などと先延ばしするのではなく、一日も早く実現するよう、運動の強化が求められます。市内経済への波及効果の高さが、全国で証明されている住宅リフォーム助成制度も「住宅のバリアフリー化助成制度」として施策化されました。対象は65歳以上の高齢者で介護保険によるバリアフリー助成が受けられない世帯に限られています。こうした制限をつくるのではなく、広くすべての世帯を対象とした制度に改善することで、よりいっそうの経済波及効果が期待できます。学校図書館の充実と学校司書が配置(モデル実施)されます。中学校給食は「デリバリー・ランチボックス方式」という問題点がある形式ですが、11月に33校で先行実施されます。15年度中に全校実施の予定です。保育所待機児童解消対策も保育所増設などで1400人の定員を増やすとしています。ただ、このうち450人は、駅前ビルなどを活用した小規模保育事業での対応となっており、子どもにとって最良の保育環境を保障するという点では、問題も抱えています。

神鉄への「敬老パスと同程度の助成」
実施は15年度からの見込み

交通網の整備について、北神急行への助成の継続と、神戸電鉄に対して「シニア層などを対象とした新たな乗客増対策」を検討するとしています。これは、市長が年末の記者会見で表明していた「敬老パスと同程度の支援」のことですが、今年度は支援策の内容などについて検討し、15年度からの実施となります。市民の声ですばらしい助成制度にしていくことが求められています。LRT(次世代型路面電車システム)やBRT(専用のバスレーンを有する、もしくは運行車両に連節バスを用いる路線バス)については、採算性なども含めて実施の可能性を検討するとしています。市バス路線の拡充やコミュニティバスの新設・拡充策なども含めた総合的な交通体系のなかで検討するべきではないでしょうか。ポートライナーのラッシュ時の混雑緩和対策として、車両数を増やし増便を計画していますが、増便が可能となるまでの期間は、バス輸送などで対応するとしています。
特別支援教育では、兵庫県が、西区の旧農業公園に知的障がい児の高等部を新設。神戸市立の垂水養護学校と青陽西養護学校を統合して、西区井吹台に移転新築するとしています。しかし、青陽東養護学校では、プレハブ校舎で対応するとしています。増え続ける知的障害児が安心して学び、成長・発達できるよう保障するという点からは極めて不十分です。

進出企業には大盤振舞
税の優遇や設備投資助成など

市民の運動を反映した施策がある程度予算化されているものの、大型開発路線は継続しています、神戸経済の活性化、雇用対策でも企業誘致に重点を置いています。税金等の優遇措置も拡充、支援対象もIT、ベンチャー、外国系企業などを優先する内容です。固定資産税は「2分の1軽減3年間」を「9割軽減5年間」に拡大(大規模特例では「9割軽減10年間」)しています。さらに設備投資への助成も「投資額の3%以内・上限5億円」など大盤振る舞いです。こうした企業誘致で雇用が約3000人増え、市税収入も約2.6倍にもなるとしています。医療産業都市構想でも「税収増になった」としていますが、本当に市税が増えたのかどうか、実態は一切わかりません。誘致企業への助成では、兵庫県が大失敗しました。にもかかわらず、同じ轍を踏むのでしょうか。一方、地域経済を支えている既存の中小企業への支援策はみえません。
また、資源ゴミ持ち去り禁止条例を10月から施行するとしていますが、自治会や資源回収に取り組む地域団体などからも様々な意見が出されています。自治会やボランティア団体などは対象からはずすべきで、成立を急がず関係者の声をもっと聞くべきです。

三宮開発、医療産業都市、神戸港など

市長選挙でも争点となった三宮開発については、新神戸駅周辺から神戸駅周辺まで、きわめて広い地域を対象にしています。こうした構想を進めるため、新年度内に将来ビジョンを策定するため官民共同で検討していくとしています。国民皆保険制度への影響が危惧される医療産業都市の推進のために51億円を計上。国際コンテナ戦略港湾の推進を口実に神戸港でのさらなる大水深バースの建設などを進めるため109億円を計上。釜山に流れている地方港の貨物を神戸港に集貨する、などとしています。神戸空港については31億円を計上していますが「将来的な三空港一体運営を視野に入れつつ、運用時間の延長や発着枠の拡大など」の実現に取り組む、という程度。利用者が増えず深刻な経営状態となっている点についての対策は示されていません。
こうした、大型公共事業推進のためには多額の予算を計上する一方、市民の暮らしに関する予算では、乳幼児医療費助成は22億円(前年度比4億円の増)、商店街・小売市場の活性化策は1.6億円程度、住宅バリアフリー化工事補助の予算は3044万円などにとどまっています。
全体の予算案を貫いているのは、市民の運動や世論に押されて市民要求を取り入れながら、これまでの「大型事業と企業誘致優先」という路線を継続する姿勢です。
今後、中学校給食の改善、乳幼児医療費助成制度の拡充、神戸電鉄への支援策の具体化、策定が進められる「神戸市子ども・子育て支援事業計画」(15~19年度)に、子どもにとって最良の保育環境の保障などを盛り込ませることなど、市民の運動で市民要求が反映される施策の実現への取り組みが求められています。

 

実質的な予算規模
単位・億円
会  計  2014年度  2013年度  増減
一般会計   6,934    6,830   104   1.50%
特別会計   6,911    6,934   △23  △0.3%
企業会計   3,180    3,047   133   4.40%
合  計   17,025   16,811   214   1.30%

一般は中小企業融資を除く
公営企業会計の制度改正による影響額を除く