15年度神戸市予算案
2015年02月23日
大型開発、企業誘致路線を継続
子ども医療費助成は1、2歳児の所得制限を撤廃
神戸市が発表した2015年度当初予算案は、一般会計7281億7400万円(前年度比211億2000万円・3%増)、特別会計7486億2300万円(同575億2600円・8.3%増)、企業会計3307億6000万円(同356億4100万円・9.7%減)、合計1兆8075億5700万円(同430億500万円・2.4%増)となっています。特別会計が大幅増となったのは、国民健康保険で県内市町間の医療費負担の調整を行う共同事業の拡大や、道路整備などにかかる市債の元金償還の増加に伴い、公債費が増加したことなどが影響しています。
安倍暴走政治に追随
予算案は、従来通りの大型開発推進とともに、国が進める地方創生と歩調を合わせています。安倍暴走政治に追随する姿勢が顕著になっています。その一方、既存中小業者への支援や福祉、教育分野への予算配分はおさえられている、というのが特徴です。
市税収入総額は2700億円(同22億円・0.8%減)となっています。法人市民税が税制改革の影響で20億円減少したのが影響しています。固定資産税も4億円減少しています。消費税増税に伴う地方消費税交付金が47億円増えています。この増収分は、乳幼児医療費助成、障害児保育等の充実にあてたとしています。
久元喜造市長は、震災20年にあたって「着実に復興し財政状況も他都市と比べてそん色ない」などとしています。予算編成の基本的な考え方では「人口減少社会にふさわしい都市像を構築していく」などとして「(神戸が)全国から選ばれるまちになることが大切」などと、都市間競争に勝ち抜く、との姿勢を鮮明にしています。そのために「居住環境・操業環境を向上させる施策をバランスよくスピーディーに進めていく必要」があると強調しています。しかし、「安定した成長のために」必要な対策としてあげているのは「都心の再生、神戸空港・神戸港・高速道路など交通インフラの整備・活性化、医療産業都市のプロジェクト」などです。
コンテナ貨物増えないのにさらに…
こうした施策が、人口減少社会に向けて取り組むべき中心的課題でしょうか。いずれも高度成長時代の施策を継承した大型開発を基本とした施策です。現実問題として、神戸空港はただの一度も需要予測に達していません。借金返済の目途も立っていません。神戸港も大型港湾施設を建設してもコンテナ貨物量は停滞したままです。高速道路の整備もこれからの低成長社会に必要なのかという疑問も提起されています。低成長時代には特に、福祉・教育分野に重点を置き、既存の中小企業支援で、地域内経済の循環を推進する施策が求められています。
大型開発では三宮駅周辺の整備など「都心の再整備」で22.6億円、LRTの導入検討もすすめるとしています。医療産業都市には59億円を計上。国家戦略プロジェクトの「(仮称)神戸アイセンター」の整備促進、高度専門医療機関の一体的運用、大手製薬会社や創薬ベンチャーの誘致に向け「創薬研究拠点」の整備などをすすめるとしています。本社機能を神戸市に移転した場合や神戸市の本社機能を拡充した場合に助成するとしています。挑戦企業、起業・創業支援も拡充されています。
コンテナ貨物量が停滞している現実と真摯に向き合うことなく「船舶の大型化に対応するため」にさらなる港湾機能の強化を図るとして111億円を計上しています。神戸空港については、3空港一体運営に向けた調査を進めるとして2億円を計上しています。スカイマークの「民事再生法の適用申請」などで、まさに八方ふさがり。借金返済のめどは立ちません。
神戸経済の活性化策についても、人口減少社会への対応として位置づけているのは「産業の競争力強化」が必要というとらえ方です。あいかわらず「起業・創業支援」に偏重しているのも特徴です。他方、既存の中小企業対策は、融資中心という従来の対策と変わりません。商店街・小売市場の活性化策は、従来施策が若干拡充されている程度で、予算も2億円余りにとどまっています。
保育所定員1200人増
「安心して子育て・教育ができる街の実現」などとして、子育て支援を充実するとしています。保育所待機児童解消として定員を1200人拡大するとしていますが、小規模保育等もふくめたもので「保育の質」の低下が懸念されます。子ども医療費助成は、新年度予算案で拡充されたものの、1、2歳児の所得制限を撤廃した程度です。このための予算は5200万円です。
市民負担も増加
市民福祉の切り捨ては継続しています。介護保険料の値上げ、公立幼稚園の廃園、幼稚園保育料値上げ、老人いこいの家の完全廃止、保育所や児童養護施設などへの上下水道料金の減免廃止などが計画されています。
市民生活分野の職員削減
「聖域なき行財政改革の実行」として、継続して取り組むとしています。新年度で255人の職員削減で、震災後、7071人の職員が削減されることになります。削減された職員は、学校給食調理業務(93人)、道路等維持管理業務(24人)、高齢者等福祉施設運営業務(55人)、保育士等(89人)、水道事業(117人)など、市民生活に影響がある分野での削減が目立っています。民間移管、民営化などによる削減で、各職場では派遣職員やアルバイトなど、非正規職員が増えているのが実態です。
市民の運動の成果も反映 電車、バス通学の小中学生に補助
歳出では市民の粘り強い運動なども一部反映されています。
子どもの医療費助成の拡充、中学校給食の新年度中の全校実施、小中学校への学校司書の配置拡充、公共交通機関を利用して遠距離通学している児童生徒への交通費助成制度の創設、北神急行への助成継続、地域猫の不妊手術に対する支援拡充、障がい者の社会参加促進へガイドヘルプの基礎時間の延長、手話通訳者の処遇改善、学童保育の過密解消と2019年度までにすべての高学年の受け入れ、市東部地域での特別支援学校整備の調査、コミュニティバスの拡充、垂水・塩屋地域にコミュニティタクシーの導入、消防団員の装備充実などが予算化されています。神戸電鉄への高齢者支援も予算化されていますが、内容は神戸電鉄が実施している料金割引制度を受け継ぐもので、利用者にとっては改悪となる内容も含まれています。
子どもの医療費についても「中学校卒業までの無料化」には程遠い内容ですが、市民の運動で少しずつですが前進しています。保育所待機児童対策についても1200人の定員を増やすとしています。ただ、このうち240人は、駅前ビルなどを活用した小規模保育事業での対応。最良の保育環境を保障するという点では、問題を残しています。
引き続き制度改善へ運動を
全体の予算案を貫いているのは、市民の運動や世論に押されて市民要求を取り入れながら、これまでの「大型事業と企業誘致優先」という路線の継続です。今後、中学校給食の改善、乳幼児医療費助成制度や神戸電鉄への支援策の改善・強化など、市民の運動で市民要求が反映される施策実現への取り組みが求められています。