神戸市 2012年度会計決算― 福祉削減、市民サービス切り捨てで黒字実現
2013年09月03日
外郭団体の経営悪化で442億円もの負担
神戸市2012年度会計決算等を審査する議会が9月3日から開かれています。9日、10日には各会派の代表質疑が行われます。日本共産党議員団から、松本のり子、大かわら鈴子議員が質問に立ち、「12年間の矢田市政」が福祉や市民サービスを削減し続けながら、空港や医療産業都市構想など大型開発に多額の財源をつぎ込んできたことなどを指摘し、市民にあたたかい市政への転換などを求めます。
決算の概要を見ると、一般会計は19億円の黒字となっています。矢田市政12年間で福祉や市民サービスの削減、職員を減らし非正規雇用を増やしてきたことなどで黒字にしているということです。
「さらなる行革推進断行」と
税収は個人市民税が、税制改正(年少扶養控除の廃止)の影響などで31億円の増となっていますが、この影響を除けばマイナスとなっています。固定資産税、都市計画税の評価替えが行われたため、それぞれ3億円、11億円のマイナスとなっています。市債発行総額は176億円も増加しています。これは、住宅供給公社の民事再生手続きにともなう損失補償などで183億円も発行したことが原因です。この183億円は、確実に市民負担に跳ね返ります。
黒字になったといいながら、今後の見通しとして「海外景気の下ぶれリスクや電気料金値上げが市民生活や地元企業に与える影響」などが不透明で、生産人口も減少するため、「(市税収入の)大幅な回復は見込めない」「(消費税増税効果についても)自治体への配分が不明」で、「引き続き厳しい財政状況が予想されるので『神戸市行財政改革2015』を断行する」として、さらなる福祉・市民サービス削減などをすすめるとしています。
「生保増で財政難」はまやかし
歳出では義務的経費が、生活保護や障害者自立支援給付費の増などで前年度よりも7億円増加しています。大きく増えているのが物件費。新神戸トンネルの移管で205億円、住宅供給公社の民事再生で183億円、舞子ビラ事業の見直しで101億円も増えたことが原因です。神戸市は、生活保護が増えることなどが、財政が苦しくなる原因のようにも言いますが、生活保護費で神戸市負担とされている分も、交付税措置されているため、生保が増えることで地方財政が圧迫されることはありません。
空港会計は赤字続き
空港特別会計は、着陸料は収入の31%にとどまっています。実質、赤字経営が続いています。新都市整備事業会計からの繰り入れや県からの補助、一般会計からの繰り入れなどでつじつまを合わせているのが実態です。国保会計への一般会計繰入額は132億円にとどまっています。高すぎる国保料を引き下げるには、もちろん国の負担金を増やすことが必要ですが、同時に市の一般会計からの繰り入れを増やすことが欠かせません。
まさに自転車操業 新都市整備事業会計
企業会計では、港湾事業会計が156億円の赤字となっています。その原因は、海上アクセスやCATへの貸付金などを棒引きしたことに伴い、158億円もの特別損失を計上したことが原因です。本来は、返済されるはずのものです。港湾事業会計の経営悪化につながります。ところが、「海上アクセスはこれからも営業を続ける」というのが神戸市の態度。そうなれば、これからも赤字がふくらむのは確実で、新たな市民負担につながる危険性はきわめて大きいといえます。
空港島や複合産業団地などを建設した新都市整備事業会計は、15億円の黒字となっています。11年度から造成地の管理運営費用や支払利息に充当する経費として「その他営業収益」が繰入金として計上されています。これを除けば赤字となっています。医療産業都市構想で「医療関連産業が集積している」とされるポートアイランド2期の土地の売却率は28%にとどまっています。複合産業団地の土地の売却率は31%です。空港建設費も含めた借金返済は01年度以降は借り換えでしのいでいます。今後も、13年度の514億円はじめ、毎年度、多額の返済が続きます。まさに自転車操業に陥っています。