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トピックス

2016年神戸市予算案

2016年02月21日

大型開発、企業誘致偏重・市民サービス切り捨てを推進
「三宮一極集中」批判うけ、地域・住民要求で前進も

神戸市が発表した2016年度当初予算案は、一般会計7273億円(前年度比9億円・0.1%減)、特別会計7287億円(同199億円・2.7%減)、企業会計3161億円(同147億円・4.4%減)、合計1兆7721億円(同355億円・2.0%減)となっています。当初予算では微減となっていますが、2015年度2月補正予算案が162億円の規模で編成されており、2月補正予算をあわせると一般会計では前年度比33億円・0.4%増と、昨年並みの予算が確保されています。

 

安倍暴走政治「成長戦略」を忠実に実行

久元市長は、予算編成にあたって、「都心の再生や公共交通網の整備、神戸港・神戸空港、医療産業都市のプロジェクトを重点的に展開」するとして、三宮駅周辺とウォーターフロント再開発に94億円、さらなる巨大港湾づくりに104億円、神戸空港の赤字補てんなど推進費に32億円、医療産業都市構想の推進に42億円を計上。
これらの大型開発の推進でふたたび「世界に誇れる」まちを実現して都市間競争にうちかち、若い世代を神戸に惹きつけ人口減少を克服するとしており、アベノミクスの「成長戦略」を本格展開する予算案となっています。
市長は、「成長により得られた税収を市民福祉や街のさらなる成長に投資する好循環をうみだす」などとして、破たんが証明済みのトリクルダウン政策を強引におしすすめようとしています。

 

高齢者福祉など市民サービス切り捨て
5年間で100億円規模の「事務事業の見直し」

久元市長は、「神戸が選ばれるまちとなるよう、まちの成長に向けた取組みを積極的に展開」するために、「迅速かつ柔軟に取組むための財源・人員を確保」する「聖域なき行財政改革」を実行していくとして「行財政改革2020(案)」を発表しました。
2016年度予算案では、5か年計画初年度として「平成28年度事務事業の見直し」を実施。敬老祝い金や配食サービスなど高齢者福祉事業の廃止、小中学校の統廃合や学校管理業務の縮減、神戸市奨学金の改悪、留学生会館の廃止、防災やエコ・CO2削減などの啓発事業の削減など52事業。削減効果は、今後5年間で100億円にのぼります。
なかには神戸フィッシュミールへの補助金や神戸RT構想推進費など、これまで議員団が、不要不急の事業と指摘してきた施策もふくまれていますが、今回の「事務事業の見直し」の大半が市民サービスの後退につながるものです。
「行財政改革2020(案)」のアクションプランでは今後、公立幼稚園の13園廃止や、公立保育所の再編。小学校調理員や斎場・墓園、高齢者や障害者福祉施設の民営化。市税減免の廃止や水道料金の見直し検討などが打ち出されています。
神戸市は、震災後の「行革」によって「危機的な財政状況から脱し、政令市平均を上回る水準にまで改善した」としています。これらは、敬老パスの有料化、福祉パスの廃止、学童保育の有料化、重度障害者福祉年金の廃止など度重なる市民サービス切り捨ての結果です。また、4年連続の黒字などでためこんだ財政調整基金は128億円にのぼっています。財政が「改善」したのなら、いまこそ市民生活を直接応援する施策をすべきですが、久元市長は三宮再開発や神戸空港支援など「成長戦略」に予算を集中しようとしています。

 

強引な職員削減・非正規・民営化が
市民サービスの担い手不足に

震災後の「行革」によって、神戸市の職員数は7190名が減員し、震災当時の職員定数の3分の2まで削減されました。
その結果、「職員の年齢構成に歪みが生じ、震災の教訓を含む経験・技術の継承が課題となって(行財政改革2020案)」います。土木の現場では、震災から27%減員され、集中豪雨による土砂災害など緊急対応に遅れが生じました。保育の現場では、震災から28%が減員。正規職員の非正規への置き換えなどで保育水準の維持や民間施設への指導・監督がむずかしくなっています。消防の現場は、震災より6%増員されましたが、職員数は政令20市で18番目と低い水準のままです。
新年度予算案では、医療産業や企業誘致、三宮再開発の推進部署などは強化されましたが、他の部署は、非正規や人材派遣、民間委託の積極活用などで対応しようとしています。
中学校給食では調理を委託された業者が、安全衛生基準に違反し、教育委員会も適切な監督指導できなかったことから、給食提供中断という事態になっています。しかし新年度予算案では、何の反省もなく民間委託デリバリー方式を継続する一方、小学校給食の調理業務まで民間委託を広げようとしています。

 

「県市連携」「地域連携」の名目で
地域切り捨て・サービス後退

神戸市は、総務省の方針に沿って公共施設等総合管理計画(案)を作成し、人口減少にそなえ、市の施設の統廃合や集約をすすめ30年間で施設の合計延床面積を10%削減するとしています。削減の中心が、小中学校と市営住宅です。
学校統廃合は、校区単位でつちかわれたコミュニティや地域の取組みを弱め、人口減少にさらに拍車をかける結果になっています。
また、久元市長は、マイナンバー制度創設にかかわったとして導入に積極的ですが、導入を理由に、住民の身近な相談窓口の区役所機能縮小や支所・出張所・連絡所を廃止・縮減しようとしています。
マイナンバーカードで、コンビニなどで諸証明書の発行を進めるとしていますが、これまで印鑑登録カードでの住民票や諸証明書の発行業務は廃止されます。
区にワンストップの総合窓口を設置するとしていますが、年金や子育てなど専門の相談窓口が廃止・縮小される危険があります。
「県市連携」「地域連携」という名で、新年度予算案ですすめられているのは、税や住宅部門の新長田再開発地域への集約や、消費生活や産業振興、就労など相談窓口の一本化で、ますます行政窓口が市民から遠のく結果になっています。

 

取り残された震災からの生活再建
生活実態に寄り添わない冷たい市政

久元市長は、新年度予算編成で「震災からの復興の歩みを着実に進め」、災害援護資金の償還免除や、新長田再開発地区への庁舎移転などで、「残された課題に対しても大きな一歩を踏み出すことができた」としています。
しかし、阪神・淡路大震災からの生活や営業が再建できていない人は取り残されたままです。久元市長は、「ポスト震災20年」などとして手を差しのべず、新年度予算案でも対策を取ろうとしていません。
象徴的なのが、借上復興住宅からの追い出しです。久元市長は、URとの借上契約満了を迎えた兵庫区のキャナルタウンの住人に「法的措置」と「損害賠償」をちらつかせ明け渡しを強要しています。
兵庫県の借上住宅では、判定委員会の判定によって、75歳以上が事実上入居を継続しており、75歳未満でも子育て世代など転居できない理由がある入居者の継続がみとめられています。しかし、神戸市は、85歳以上など一定条件を機械的にあてはめ入居者には強引に転居を求めています。被災者の生活実態に全く寄り添わない冷たい神戸市政の実態が浮きぼりになっています。

 

市民の運動の成果も
子ども医療費、就学前まで所得制限撤廃

新年度予算案では市民の粘り強い運動なども反映されています。
子どもの医療費の助成は、3年連続無料化は見送られましたが、就学前までの所得制限が撤廃され、3歳以上の一部負担金は500円から400円に拡充。小児慢性特定疾患医療費助成も改善(月800円上限、人工呼吸器は無料)。保育所保育料も国の多子世帯に上乗せして軽減されます。
過密校対策で、HATこうべに小学校と特別支援学校が新設されるほか、御影北小学校の校舎の増改築が予算化されました。昨年にひきつづき小中学校への学校司書の配置が拡充されるほか、医療的ケアを必要とする児童生徒支援として看護師を週一回派遣します。いじめ不登校対策として、スクールカウンセラーとソーシャルワーカーが増員されました。
学童保育の高学年の受け入れを増やすとともに、すべての施設で19時までの開設と休業日の8時からの開設を実施します。
保育所待機児童対策についても700人の定員を増やすとしています。ただ、このうち300人は小規模保育事業です。
子ども・子育て世帯の貧困対策では、母子家庭等医療費助成の所得制限の緩和と一部負担金の減額。税法上の寡婦(夫)控除が適用されない未婚のひとり親家庭に対して、保育料などの控除のみなし適用が実施されます。
地域の住環境改善では、西神中央駅周辺に区役所を建設。地域交通支援では、神戸電鉄の高齢者利用促進パス「シーパスワン」の神戸高速鉄道への適用拡大(料金は値上げ)が実現しました。
バリアフリーでは、地下鉄三宮駅(2019年度稼働開始)をはじめ地下鉄西神山手線にホームドアが設置されます。
既存資源を活用した観光施策や景観環境保全では、六甲山の遊休施設の活用調査や、夏休み平日の摩耶ビューライン・六甲有馬ロープウェーの無料運行を実施。須磨海岸の再整備や御影公会堂の耐震改修がはじまります。六甲山森林整備やハイキング道の整備促進、間伐材などを活用したまきストーブ設置助成も新設されます。
このほか特定健診の検針項目の拡充、認知症関連対策の拡充や、訪問歯科・口腔ケアの推進など高齢者の健康づくりも拡充しています。

 

引き続き制度改善へ運動を

新年度予算案で久元市長は、三宮再開発や都心への企業誘致に前のめりになる一方で、地域から「三宮一極集中ではないのか」「地域が切り捨てられる」という、市民からの厳しい指摘や、住民運動に押されて、市民要求をある程度取り入れざるを得なくなっています。
しかし、地域経済対策では、誘致企業・新産業頼に一層傾斜し、地場産業や既存小企業支援などはほとんど拡充されていません。福祉や子育て・すまいなど市民の生活実態に寄り添った支援策で、市民生活を直接温める需要を喚起することと同時に、地域に根付いた小企業や既存の商店街を直接支援することで、地域内経済の循環を推進することでこそ地域経済は再建できます。
ひきつづき、中学校給食の改善、子どもの医療費無料化や、神戸電鉄への支援策の改善など、市民の運動で市民要求が反映される施策実現への取組みが求められています。