議会報告
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3月8日に神戸市予算特別委員会がひらかれ、日本共産党神戸市議団を代表して味口としゆき議員が総括質疑をおこないました。
質疑項目
1.王子公園再整備にともなう旧ハンター邸の移築について
2.こども医療費の無料化について
3.神戸空港の国際化に向けた整備について
神戸市は、2023年度の予算案で突如、旧ハンター邸の移築を提案しました。2月24日の予算特別委員会の文化スポーツ局審査では、北野の山口邸への移築の検討は夏前から始まったと答弁しました。再整備基本方針の修正素案は、昨年9月に公表・意見募集をおこない、12月に基本方針を公表しました。つまり、夏前からハンター邸移築の話が出ていたにもかかわらず、神戸市は情報開示せず、基本方針が決まった途端に移築を公表したことになります。味口議員は、登山研修所と同様に旧ハンター邸も移築する可能性があるなら市民に情報開示するべきであったと厳しく指摘し、「大学誘致という市長の固執と市民との間で納得を得られていないという現状は変わっていない。王子に大学はいらないという市民の声をしっかり聞いて中止すべき」と質しました。答弁ダイジェスト
小原副市長:所有者と接触したのが昨年夏前。その後、協議を経て昨年末に所有者から市への売却の意思が確認できた。
味口議員:神戸市の子育て応援のサイトでは、王子公園には王子動物園に並んで資料館や遊園地、旧ハンター邸のことが書かれている。なぜ急に北野に移築することが最善だと言い出したのか。
小原副市長:それは今の王子地域の現状を紹介し、アピールしただけ。国の文化財の有効活用という観点から北野に移築するのがふさわしい。
味口議員:国の重要文化財までも犠牲にすることは認められない。市長は本会議で、3回目の選挙で特に重要な公約としたのが王子公園再整備で、誠実に実現しなければならないと答弁したが、市長自身の公約であれば、市民がいくら異論を唱えても実行できると考えているのか。
久元市長:どのような公約であっても、私一人の判断で実行できるものではないと思っている。
味口議員:市長が6年前に出した著書を読むと、議会で議決しても市民が蚊帳の外では駄目だという見解を持っていた。今まさに市民を蚊帳の外に置いているのではないのか。
久元市長:そこに書いた考えは今も変わっていない。
味口議員:王子公園のことを憂いているみなさんは、そのように受け止めていない。2年前から公約としていたと言うが、プールがなくなり、テニスコートやグラウンドが縮小されることなど選挙前には聞いていなかった。さらに登山研修所は残すとしていたにもかかわらず後になって移設、今回の旧ハンター邸に至っては、修正素案までは存続としながら基本方針が決まったとたんに移築。市民は何を信じればよいのか。
久元市長:計画を1センチも動かさずに進めるということではない。全く計画を変更しないのは、かえって色々な意見に応えることにならない。
味口議員:色々な意見を聞いて変えてきたと言うなら、市民の「王子公園に大学はいらない」という声をしっかり聞いて中止すべきだ。
子どもたちの苦難に向き合い、今すぐこども医療費完全無料化への決断を
久元市長は、庁内向けのウェブ掲示板で、こども医療費について三田市が無料から一部負担へと変更したことを、「勇気ある対応」と高く評価しました。同時に「神戸市政は、無定見なバラマキとは一線を画し」とも書いています。さらにこの掲示板で久元市長は、近隣自治体が次々と無料化に追随していく傾向にあることについても「残念」と述べています。味口議員は久元市長に対し、こども医療費を完全無料化することを「無定見なバラマキ」と表現したことについて「重岡仁論文(東大教授・経済学で医学的知見に立った論文ではない)だけを一方的に取り上げ、コスト削減を優先にしたその場しのぎのやり方だ」と批判。さらに味口議員は「コロナの影響により患者数は減少しているが、虐待対応件数や不登校による受診者数の増加が確認されている」と指摘し、行政としてコロナ禍での子どもたちの苦難を呼びかけ、支援すべきと求めました。
答弁ダイジェスト
味口議員:これ(こども医療費無料化)が「無定見なバラマキ」と言うなら、初めての市長選時の「こども医療費を速やかにゼロにする」という公約は「無定見なバラマキ」なのか。
久元市長:実際に市長になって完全に無料化するには様々な弊害があった。私がしてきたことは安易なバラマキではない。
味口議員:ゼロにすることについて「無定見なバラマキ」、近隣自治体が次々と追随していく傾向を「残念」と表現したではないか。
久元市長:私は学術論文を紹介しただけだ。
味口議員:この論文について、企画調整局長は完全無料化すると不適切な抗生物質の治療が増えると答弁しているが、そのような認識を持っているのか。アメリカで最も権威のある論文では、小児への抗生物質投与は喘息の発作を増やすとされている。「明確なエビデンス」どころか、小児科医の視点から見れば、全くこの論文に合理性などない。
久元市長:そのような小児科医の意見があることは承知しているが、私は専門家ではないので、この論文が100%正しいかを申し上げるつもりはない。
味口議員:この重岡論文はコロナ前の状況を踏まえたものだ。小児科学会では、コロナ禍で受診抑制がおこり、虐待・不登校が増加しており、子どもたちの苦難に着目すべきという見解だ。
久元市長:コロナの中で子どもたちの様々な苦難や苦労をしっかりと調査し、その結果をお互いに出し合うことは非常に意義があることだ。
味口議員:意義があると認めるなら、ゼロにすると過剰受診が増えるなどと根拠のないものに縛られずにゼロに踏み切るべきだ。
小原副市長:極論として「無料にするかの議論」と「医療を受けやすくするための充実」とを混同しているように感じる。
味口議員:一見問題がなさそうな受診行動の裏に、家族や子どもの悩みや不安が隠されているかもしれない。どんな小さな心配や不安でも気軽に相談してもらえることを小児科医は強く願っている。まだ「無定見なバラマキ」や「極論」などと言って突っぱねるのか。
久元市長:私は医療費負担をゼロにするのが無定見なバラマキと言っていない。言葉のニュアンスとしては「その場しのぎ」ということかもしれないが、事務負担金を無料にすることだけを無定見なバラマキに当てはまるとは考えていない。
味口議員:最初の公約は何だったのか。それこそその場しのぎだ。その場しのぎの考え方はやめるべきだ。
2400億円もの大型開発よりも市民の暮らし・営業・教育応援のための支援を
神戸市は、来年度予算で神戸空港の国際化に向けた整備に128億円、さらに2400億円以上かかるとされる新地下鉄構想(国際化のために三宮と神戸空港を直結する)について、可能性は幅広く探っていきたいと、調査することを否定していません。味口議員は、神戸空港の国際化に乗じた無駄な大型開発、三宮再開発など無定見なバラマキを改め、住民の願いを実現すべきと質しました。
答弁ダイジェスト
今西副市長:神戸空港の国際化の効果を最大限に活用するためには、空港と都心・三宮を結ぶアクセスの強化は重要な課題だ。神戸の将来を担う人材の投資なども併せて充実することで、市民所得の向上や神戸経済の活性化につなげ、持続可能な大都市経営をおこなっていきたい。
味口議員:持続可能と言うが、2020年から2022年の2年間で、政令市の中で一番人口が減っているのが神戸市だ。大型開発だけでは持続可能な都市の成長はない。今回の予算特別委員会では、このような無定見なバラマキのために市民の暮らし・営業・教育を応援する予算が不足していることが浮き彫りになった。神戸空港の国際化に乗じた無駄な大型開発、三宮再開発などは改め、学校給食の無償化、国民健康保険料・介護保険料の引下げなど、原油価格・物価高騰に苦しむ切実な住民の願いを実現させるべきだ。